まあ何だかんだで色々読んではいるのですが、最近の中で出色だったのが何と言ってもつい昨日読み終えた

寝ぼけ署長 (新潮文庫)

寝ぼけ署長 (新潮文庫)

これでした。
もうとんでもなく面白かったですよ。在任中いつも寝てばかりで「寝ぼけ署長」のあだ名を奉られた警察署長五道三省(ごどうさんしょう)氏の人に知られぬ活躍を描いたもので、単に悪を裁くのではなく、人間性への深い理解と愛情をもって幾多の事件を思わぬ解決へと導いてゆく様が実に素晴らしく、しかもとにかくべらぼうに面白いのです。
で、山本周五郎といえば、先日文句なく代表作のひとつである
樅ノ木は残った(上) (新潮文庫)

樅ノ木は残った(上) (新潮文庫)

樅ノ木は残った(中) (新潮文庫)

樅ノ木は残った(中) (新潮文庫)

樅ノ木は残った(下) (新潮文庫)

樅ノ木は残った(下) (新潮文庫)

こちらも読んだのですが、まあ正直上巻まではもう主人公である原田甲斐がとにかく自分の内面や考えをさらけ出さないことおびただしく、かつ状況も不透明なまま進むので、どれほどもう読むの止めようかと思ったか知れませんでした。が、「くびじろ」のくだりあたりから次第に内容に引きこまれてゆき、最後まで読み通したときは、やっぱり読んで良かったとしみじみ思ったものでした。
様々な人物たちがそれぞれに生き、そしてときに死んでゆく様が生き生きと描かれていますが、なかでもひときわ印象的だったのが宮本新八とおみやの二人でしょうか。まさに数奇としか言い様の無い運命のどん底をいかにしてもがき、生き抜いてゆくかをいつかこの本を読まれる方はぜひ味わって頂きたく思います。