先日の
魔法少女まどか☆マギカ 新編 叛逆の物語 感想 - 闇野神殿の日記
の続き、言うなれば「激情版」であります。

※この連作記事を徹底加筆修正の上収録し、書き下ろし記事と短編小説を加えた同人誌を冬コミコミケ85)にて発行します。
冬コミ新刊情報「黄泉姫夢幻VI」「まどか感想本」 - 闇野神殿の日記

C85新刊「ほむらちゃんへの愛をこじらせた果ての姿だもの!!」 by 闇野神殿 on pixiv

以下ネタバレ注意。
……注意したからね! ネタバレ注意したからね!!

  • 「それでも、私は貴女が幸せになれる世界を望むから」

……なんですか、なんなんですかこの娘はッッ!!
なんでこの後に及んですらまどかの幸せのことしか頭にないんですかこの悪魔の皮をかぶった……かぶった……ううっ(涙)こんな子を適切に表現できる例えなんて俺知らない!
そう、それが、暁美ほむらっていう子なんですよね……。

そもそも彼女が何をしたのかといえば「自分以外をみんな幸せにした」だけじゃないですかッッ!!

「私はどんな罪だって背負える」「もうためらわない」これって、既に『叛逆』の覚悟を決めた言葉ですよね。でも、まどかも他のみんなも気づいていない。
正直、円環の理の記憶を取り戻してほむらを導きにきたまどかもさやかも、あえて言えば『呑気すぎだった』とすら言っていいくらいだった。本当にほむらの絶望と辛さとを理解していたなら、あんな悠長な迎え方なんてしてる暇なんてなかったんじゃないか。
なり振りもなにもかも構わず、一刻も早く、一瞬さえも惜しむようにほむらのもとに飛んでいき、ほむらを強引に奪い取るくらいに抱きしめてあげるべきだったんじゃないのか。
そう、ほむらが、『叛逆』なんて忘れてしまうくらいに強く、強く。

まどか☆マギカって作品は、そもそもの物語のはじまりからの蓄積が積み重なっているキャラってのがほむらだけで、他のキャラは本来主人公のはずのまどかでさえループのたびにリセットがかかってしまう。だからほむら側からの想いは重なってるけどまどか側からはゼロスタートの繰り返しの不均衡。
TVシリーズにおいて唯一その不均衡が是正されたのがまどか概念化のときループの全てを見通すことができたときなんだけど、結局ほむらは置いてきぼりをくらってしまった。
その不均衡にようやく再度の是正がかかった、かかるはずだったのがあの『叛逆』の瞬間。
すべてを思い出したまどかが、あんな風にゆっくりと降りてくるのは、傍から見てればそれは感動的なんだろうけれども、ほむらのあれだけの絶望を見た直後であれっていうのは、とくに再度以降観るときには、「それは呑気すぎです、まどかさん」と言いたくなってしまうのですね。
まどかが本当にほむらと同等の想いを抱きあっていたなら、あのほむらの絶望を目の当たりにした直後なら、言うべきことは「ごめんね、あんな酷いことを押し付け続けちゃって、ずっと一人ぼっちにさせちゃってごめんね」であるべきじゃなかったのか。
ほむらの許へとたどりつく僅かな時間すらもどかしいくらいに一心不乱に、それこそ宙をかきわけて飛んでいくくらいであるべきじゃなかったのか。
ほむらに奪われるより先に、自分の方こそがほむらを奪い取るくらいであるべきじゃなかったのか。
まどか自身の強い想いでほむらの『叛逆』の意志をすら押し流してしまえるくらいの激情をぶつけてやれれば、あの結末にはならなかったんじゃないのか。


元々、円環の理っていうのは、QBの「大きすぎる正しさ」に押しつぶされようとしている小さな、けれども掛け替えのない祈りを救いたい、ということから生まれたものであるはずなのだが、ほむらの小さな願いはまたもその「大いなる正しさ」に押しつぶされることとなる。そう、ほむらの願いだけは、常に押しつぶされ、蔑ろにされ続けてきた。


まどかの願いは「みんなと離れたくなんかない」だったけれども、それでもあえてまどかは「自分がどうなっても、すべての魔女を消し去りたい」と祈った。ほむらの願いもまた、「まどかと一緒にいたい」というほんのささやかなものだったが、彼女は「まどかを救いたい」と祈った。「祈ったこと」と「ほんとうの気持ち」は必ずしもイコールではない。一人の女の子としての小さくてささやかで、でも大切な願いをあえて押しつぶして、愛する他者のために祈ったというのがこの二人の祈りの共通点かも知れない。
ただし、まどかにとっての愛する他者というのは、マミさん、さやか、杏子、そこにはほむらも含まれるものの、これまで出会ってきた魔法少女たちと、その背後にこれまで存在し、彼女たちと同じように祈りに裏切られ破滅していったすべての魔法少女たちであったのだが、ほむらにとっては、たった一人、まどかただ一人。
他のみんなへの想いも決して無ではありえない(実際、新編においてほむらの他の子たちへの想いも描かれていた)が、本当に何と引換にしても、自分の命、自分の幸せ、自分の願い全てとさえ引換えにしてもいいと思っているのはまどかただひとり、彼女の幸せのみ。だが、ほむらの切ないところは、その「まどかの幸せ」の横に「自分を置けない」こと。「まどかが幸せであるために自分の存在が必要だと思えない」こと。

もし、まどかのほむらに対する罪があるとしたら、その最大のものは、おそらく、ほむらに対し、「自分にはほむらが必要な存在なんだよ」っていうことを充分に伝えてあげられなかったこと。
ほむらは、まどかにとって自分が大切な存在であるという実感を持てたことがほとんどない。だから、ほむらはまどかの幸せを望むとき、その横に自分を置けない。だから、まどかに自分の言葉を聞いてもらえて、優しくしてもらえたというただそれだけで満足して、死に向かってしまうことさえできてしまう。

  • カラフルの ひどい ほむらちゃんいじめ

濁りますねえ。ええとても濁りますねえうふふふふ。
「鮮やかな色になって」って歌詞のとこで普段にまして各色が強調された感のある四人がモノクロ状態で膝ついてるほむらちゃんの周りで踊り回るとかどんだけいじめですか。
最後にほむらちゃんが手を伸ばそうとしたまどかさんが寸前に砂になって崩れ落ちるとかどんだけいじめですか。
……まァ本編はさらにこれでもかとばかりの怒涛のほむらちゃんいじめのオンパレードだったんですけどね!

実際、劇場でEDの『君の銀の庭』を聴くたび、映像観るたびに「どうしてこうならなかった、どうしてこうならなかったァアあああああッッ!」と地面を殴りつけて泣き伏したくなる衝動と戦っており申すなり。まどかとほむら(を思わせる短いツインテールの子とストレートロングの子のシルエット)が最後しっかりと手を取り合って二人で一緒に駆けてゆくという……ううううう。

 閑話休題

  • ひとりぼっちになったらダメだよ、ほむらちゃん

みんなの理想の幸せが描かれ、EDが流れたあとのエピローグ的描写。夜の街を眺めながら独り踊るほむら。自らのダークオーブだけをうっとりと眺め、踊る。これは、彼女が孤独になっているということの描写にほかならないように思われる。まどかを「もう離さない」と取り戻したにもかかわらず、彼女は「貴女が幸せになれる世界」のために自らまどかから距離を置く。
だけど。記憶を取り戻しかけたまどかを抱きしめた後、明らかにほむらの尋常でない想いに引いていたまどかだが、結び直してくれた赤いリボンは付けてくれている。少なくとも、ほむらの真摯な想いの一端くらいは伝わっていたのだと思いたい。それが、それだけが、きっと最後に残った、まどかとほむらの心をつなぐ道しるべ。そうであってほしいと、今はそう思うのみ。

ところで、何故か結界に誘い込まれていた中沢くん。
ほむらちゃんが転校してくるたびに先生に当てられてるから教室の外で待っているであろうとき無駄に印象に残ってたんでせうかね。うーむ。


最後に、断っておきたい重要なこと。
つらつら語って参りましたが、私は、「叛逆の物語」がこうであって欲しかったと思っているわけじゃないんですよ、実は。
登場人物たちに「こうして欲しかった」と作品に「こうあって欲しかった」は、似て非なるものです。
「叛逆の物語」という作品を観て、自分がこういう、もやもやしたり揺さぶられたりということまで含めてが自分にとっての「叛逆の物語」だってことなんです。「作品が観た人の中で初めて完成する」っていうのはそういう観た人の思いまでが作品なんだってことなんでしょう。この文章を書いた時点で、私は「叛逆の物語」を都合六回観に行きましたが、観るたびに少しずつ新たな発見があったり、想いが深まったりと変化が生じたりしています。まだ何回か観に行ったり、BD/DVDが出たら当然購入してまた観ることになるでしょうが、そのときもまた、どこかこれまでと違った想いを抱くかもしれません。
私にとっての「叛逆の物語」はすでに肯定否定だのそういう存在ではなくなってしまった感があります。この稀有な、無二の作品をまるごと受け入れた上で、自分の中で作用を及ぼし続けていてくれることを望むような。
だから、愛する「魔法少女まどか☆マギカ」の一部として、「叛逆の物語」は私にとって「痛みさえ愛おしい」作品だ、と言っていいのかもしれません。


今回も、各論的な部分に触れることができませんでしたので、またの機会にそのへんもまた書いておきたいところです。しかしなんかもうこれ発表したら世間体的な意味でいろいろヤバいんじゃねーか的な気もしましたがもういいの! 書いちゃう!

最後の最後に。マミさん、さやかちゃんと戦ったあと、心配したまどかさんが来てくれたとき、あわてて袖で顔についた血をぬぐうほむらちゃん可愛い! 可愛過ぎる! ほむらちゃん愛してる!

魔法少女まどか☆マギカ 新編 叛逆の物語 感想 - 闇野神殿の日記
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