先日からニコンの新製品がどんどこどんどこ発表になったり発売されたりして、遺伝子レベルからのニコン党である私としては嬉しい悲鳴を上げ続けていたりする訳ですが、ここらでちょっと、今後ニコンのカメラの機能において、こんな改良がされたらいいなあ、というようなことを書いてみようかと思った次第。
感度自動制御。
ああ、またか……とか思われるかもですが、今回の話はこれまで書いてきたD300s以降の新感度自動制御への批判ではありません。まあ、あれへの不満は変わっていないですし、あれの改善への希望もこれまで通りなのですが、今回はもう少し先の話、さらに感度自動制御が使いやすくなるための提案への試論、といったところです。

「手ブレ限界=シャッタースピード〔1/焦点距離〕秒以下」
ある程度写真をやっていた人なら、大抵はこの公式(?)を知っていると思います。つまり、手ブレをしにくい、とされるシャッタースピードとレンズの焦点距離との関係を現したもので、50mmのレンズを使用した場合、一般的に1/50秒のシャッタースピード、100mmの焦点距離なら1/100秒、300mmのレンズなら1/300秒以上のシャッタースピードが切れれば手ブレが「しにくい」というものです。
まあ細かいことを言うなら、当然これはしっかりと基本通りにカメラをホールドして撮ったときのことですし、個人差も大きく、「手ブレしにくい」についても、あくまで「一定のサイズまで引き伸ばしたときにぶれていないように見える」という指標に過ぎません(等倍で見て厳密にブレない、という意味では決してない)。かつ、一般的なデジタル一眼レフのサイズであるAPS-CニコンではDXフォーマット)では、焦点距離と画角の関係が35mmフィルム(いわゆるフルサイズ(この呼び方嫌いだが)、ニコンでいうFXフォーマット)の1.5倍になるため、上記でいうなら50mmレンズの場合シャッタースピード1/75秒、100mmは1/150秒300mmは1/450秒という関係になります。

さて、もう一つの要素として、露出と感度の関係ということがあります。露出というのは被写体の明るさに対して、絞りとシャッタースピード、そしてISO感度の3つの要素が組み合わされることで決まります。
つまり、被写体が暗い場合には、手ブレを防ぎたいからといってむやみにシャッタースピードを上げても、絞りとISO感度がそれを許さなければ画像は真っ暗になってしまうことになります。
この場合、絞りはレンズの性能に依存し、最も絞りを開けた状態(開放)にした状態が最速のシャッタースピードを得られることになります。ですが、特にズームレンズの場合に顕著ですが、被写体が暗い(夕方〜夜間、あるいは室内等)では、絞りを開放にしても思うようなシャッタースピードは得られないことがほとんどです。

そして、ここでISO感度、という要素が登場します。フィルム時代は、このISO感度はフィルムに依存していました。つまり、フィルムを一本撮り切るまで感度を変えることはできませんでした。デジタル時代になって、一コマごとに感度を自由自在に変え得る、という可能性が出て来たのです。

ただし! ここで注意したいのは、このISO感度も、それほど思うように変えられる、というものではないということ。もちろん、「変えるだけ」ならば、カメラの設定範囲内でいくらでも変えることは可能です。ただし、これは撮像センサーの受けた光を電気的にゲインアップすることで変えているため、感度を上げることでノイズが発生し、上げれば上げるだけノイズも増加、最大感度まで上げれば大抵のカメラでは砂嵐のようなノイズの中に被写体がある、という状況になってしまいます。
そのため、暗い場所での撮影は、ブレないためのシャッタースピードと、画像の荒れが自分にとって許容できるぎりぎりの感度設定とのせめぎ合いとなり、この判断が的確に出来るかどうかが写真の「腕」の少なくとも一要素となるわけです。

こうして手ブレとシャッタースピードの関係をつらつら述べてきましたのは、これまでのニコンの感度自動制御が基本的には実によく出来ていたことを改めて理解して頂くための前段となります。

ニコンの感度自動制御は、あらかじめ「これ以上上げたくない限界ISO感度」と「これ以上なら手ブレしない自信があるシャッタースピード」をカメラにあらかじめ設定しておくことで、被写体が暗くなってもシャッタースピードが限界値まで下がったら自動的に自分の許せる範囲まで感度を上げてくれ、それが上限に達してはじめてシャッタースピードが下がり始めるようになります。

言うなれば、感度自動制御は自分の腕をカメラにプリセットできる機能と言うことが出来るのではないでしょうか。
※ちなみに他メーカーでこのようにきめ細かな感度設定が出来るのはペンタックスくらい、それ以外はほぼメーカーデフォルト設定一本やり、キヤノンが最新機種でようやくこれに近くはなった「らしい」ですが、基本まず積極的にガンガン感度を上げてしまう傾向は言われ続けており、キヤノンユーザーは概して感度オート(ニコンのそれではなく、一般的な自動的に感度をカメラが変える機能のこと)には否定的な傾向が見られるようです。

さて、そんな使用者の立場に基づく優れた使い勝手を持つニコンの感度自動制御ですが、ここで一つの問題点が浮上します。つまり……。

ズームレンズ
特に近年爆発的に普及した高倍率ズームレンズの存在です。
カメラに設定できる下限シャッタースピードは一つだけです。たとえば私の場合1/60くらいにしておくことが多いのですが……例えば(FXフォーマットのため1.5倍換算しなくていい)D700に24-120mm、というズームレンズを装着します。
広角側にした場合、焦点距離は24mmとなります。この場合手ブレしにくいシャッタースピードは1/24程度、ということに「一応は」なります。一応、としたのは他に被写体ブレ(これはシャッタースピードを上げる以外対応策はない)や手ブレ補正(ニコンではVRと呼ぶ)などにより実使用においては使用者の状況判断次第となるからです。そして、「同じレンズで」望遠側にした場合には焦点距離120mm、手ブレ限界とされるのは1/120秒となる訳です。
この場合も実使用時においては手ブレ補正に依存することなどで「ある程度は」カバーできるのですが。これがさらに高倍率な28-300mmなどとなればさらにこの傾向は顕著となります。

つまり広角側ではこれくらいあれば余裕、なシャッタースピードでも、望遠側では厳しい、ということが発生するわけです。いや、高倍率に限らず、レンズを交換した際にも同じことが言えるわけです。

さて、そろそろ私が何を言いたいか察しておられる方も多いのではないかと思いますが、つまり、
感度自動制御の下限シャッタースピードを可変式には出来ないものだろうか
ということです。

これが「技術的に可能」であるのは確かです。ニコンのSB-600以上の外付けスピードライトを使用されている方ならご存知だと思いますが、レンズをズームさせることで、ストロボ内でも発光部のズーミングが自動的になされているからです。つまり、レンズとボディは(CPU内蔵レンズであれば)ズーミングによる焦点距離変更の情報伝達がされているのです。レンズでズーミングした情報がカメラボディに伝わっており、それが外付けストロボを操作しているのなら、カメラボディ内の設定にそれを反映させることは容易でしょう。

あとは、どのようなアルゴリズムでその変更を行うか、でしょう。まあ例えば、ですが……。
ハイ・ミドル・ローくらいのポジションを用意し、ミドルで焦点距離分の1シャッタースピードを基準とした可変、ハイはそれより一段速く、ローで一段遅くというような可変、あるいは、もう少し簡単に、例えば50mm〜85mmくらいを閾値として、それ以下とそれ以上の焦点距離のときで二通りの下限設定が行える(閾値焦点距離も変更できるとなお良いかも)、など……。
この二つの場合、前者なら従来の感度自動制御に設定をもう1ライン追加、後者ならそのまま改善、という感じとなるでしょうか? 技術的には容易なはず、問題点とするなら、設定が煩雑となり、初心者には判りづらくなる(可能性がある、とメーカーに判断されてしまう)ことでしょうか。

しかし、実際の使用状況下で、感度自動制御は便利であり、極めて実用本位な優れた機能である、と認めつつも、もう一歩、今回私が提案したようになってくれれば、とは何度も思いました。
今回は常々感じていたことを試論、という形でこうしてまとめてみた訳ですが、もう少し自分のなかでまとまったら、メーカーにユーザーの一意見として伝えてみたいとも思っています。

お読みになった、あるいはニコン機で感度自動制御を使用されている皆さんはいかが思われますでしょうか?